Bueno!) こんにちは。と言うか、お帰りなさいかな。今日はカリフォルニアから帰ってきたばかりで、出身地の奈良でちょうど今、展覧会を開いているオバンこと松田大 児さんを訪ねていますが、アメリカは楽しかったんじゃないですか?ヴェンチュラのパタゴニア(本社・本店)では、すごい歓迎を受けたって聞きましたけど。 サイン会のようになったとか?
MATSUDA) うん。楽しかったね。またアメリカの人たちが褒め上手で・・・(笑)。
やっぱりアメリカのパタゴニアのショップに自分の本とT-シャツが並んでるのを見たら感激した。ちょうど一年前のムーンシャインフェスティバルのときにカリフォルニアに行ったときは、まだこの一連のことは始まってなかったんで。
Bueno!) ちょっとした変化?
MATSUDA) すごい変化。イヴォン(シュイナード/ パタゴニア創始者)がまた落ち着いた静かな人で、すごいことをやり遂げてる人の謙虚さみたいなのがにじみ出てて・・・・。
今回ヴェンチュラでは次に展開してもらうトートバッグのデザインを見せてもらったりして、あとは波乗りして。僕は南もにぎやかで楽しいけど、ヴェ ンチュラの落ち着いた感じの方が合うみたい。海が冷たくてスーツ着て、ブーツはいて、改めて日ごろ自分たちがいかにいい環境でサーフィンしてるのか、再発 見したところもあるかな
Bueno!) その種子島で描いた朴訥とした正直者のアイランドスタイルがオバンの絵からは伝わってきて見ていて和みますよね。サーフィンしない人たちにもファンがいっぱいいて!
MATSUDA)そもそも自分が好きな芸術家たちの共通した生き方に、「つたなさ」とか純粋さとかを大切にしていると ころがあって、それって、たとえば商売してたらそういうふうにもいかないことも、アーティストとしてはそこを追及していける。実は自分は奈良で商売してい る家の跡取りだったんで、それまではずっと迷いがあって、自分の中で揺れてるって言うか・・・・。
芸術家たちの生き方と出会って、これだったら自分もやれる!って決断した。
昔子供の頃、書道の時間があって、初めて「もり」って書いて、このとき自分で書けた!って感じがした・・・。この書けた!って感じは自分の責任で決めたこ とって言うか、その感じが、たとえば自分がその後絵を描いて、これで描けた!って思うときも同じ感覚でね。芸術家の生き方に出会ったときも、この「もり」 を書けたって感じがあった。
Bueno!) 絵を描く前に生き方から?
MATSUDA)そう。最初はまだサーフィンを絵にすることはちょっと俗っぽい気がしてしたくなかった。ずっとあと で、いろいろと苦しい時期もあって、そんなとき、つくづくサーフィンってええなあ、と実感して、そうなってくるとそのすばらしさを周りにも伝えたくなっ て、次々と作品ができて。 サーフィンしてると、やっぱり僕が大事にしてる「つたなさ」とか自分の中の子どもを、いつまでも無くさずに大切にしていけるっていうか。自然と接してる訳 やしね。 サーフィンは一番長くやっていて、そこでは自分はどんどん自由になっていけてて、それに僕のアートが続いていってる感じかな?ほら、僕の本にも載ってる 「25年経ってまだ魔法がさめない」ってあるでしょ?あの感じ。
自分のアートはサーフィンしない人たちにもどんどん見てもらいたいし、実際最近はこんなところにも本があるって見つけたりしてうれしいなって。
Bueno!) 種子島の生活も長くなりましたね。
MATSUDA) 14年。けど永住感覚はないんで、自分たちはずっと根を張らずにおったほうがええんかな、と思ってるし、なんか一生旅気分で。
Bueno!) ところで島のサーファー人口も増えたでしょう?
MATSUDA) 15年前45人だったのが300人に。それで島では種子島をサーフィンの島みたいな打ち出し方をする動きがあって、そうなったときにサーファーたちがいい形で島の動きに取り組んでいけるように、今からいろいろと話し合って考えているところ。
たとえば100年続けられるビーチクリーニングとかもそのひとつ。よく人間が自然を守ろうって言うけど、どこかおこがましい感じがするんで、自然に対して 常に謙虚な気持ちや教わる気持ちを忘れずにいたい・・・。サーファーって自分の中にいて、そういう謙虚な教えをしてくれる「古代人」に対して敏感な人種だ と思うし。
Bueno!) 今度は古代人ですか!?(笑)来年もまたスローライフから生まれる活躍を楽しみにしています。
* 奈良市に新しくオープンした「奈良界」のギャラリーで開催中の松田大児の展覧会は、残念ながらインタビューの日が最終日でした。『アロハ・ジャーニー』で お馴染みのアイランドスタイルの油絵に加え、松田氏がずっと続けて描いている墨と岩絵の具のオリエンタルな絵のシリーズも見ることができました。